Kru Prateep
ประวัติ ครูประทีป
プラティープ先生のライフ・ヒストリーは、彼女が支援した無数の個人や家族のライフ・ストーリーでもあるといえます。彼女の生きざまが社会からの注目を集めるようになったことで、無名で無力な人々の人生に、前向きな変化と力を与えることができるようになりました。
バンコクのクロントイ・スラムで労働者の両親のもとに生まれたプラティープ・ウンソンタムさんは、出生時に登録されていなかったため、公立校に入学する資格がありませんでした。彼女は私立の小学校に4年間通わせてもらったのですが、両親には、さらに彼女を進学させて教育費を支払う余裕がありませんでした。そこで彼女は 11 歳で働き始め、同時に夜間学校で勉強を続けました。
1968 年、16 歳のプラティープさんと姉のミンポーンさんは、仕事に行くかわりに自宅の下に小さな寺子屋を設立し、学校に通えないスラムの子どもたちが 1 日あたり 1 バーツのお金で教育を受けられるようにしました。
1971 年、隣接するバンコク港の拡張により、多くの家族が立ち退きを余儀なくされました。そこでプラティープさんは、スラム・コミュニティが政府と交渉するのを手伝いました。プラティープさんの「1日1バーツ学校」も違法と宣言され立ち退きに晒されたのですが、報道関係者や地域の人々は一般大衆にスラムの住民の窮状を警告し、より大きな同情を促し、政府の行動に対しての反対意見を引き出しました。
1977 年、「1 日 1 バーツ学校」は、パッタナー共同体小学校として知られるようになり、バンコク都立の小学校の認可を受け、プラティープ先生は初代校長を務めることになりました。
当時26 歳のプラティープ先生は、スラムでの並外れた努力と善意による献身的な活動が評価され、1978 年にラモン・マグサイサイ賞を受賞しました。彼女は賞金 20,000 米ドルを投じて Duang Prateep Foundation (「希望のともしび財団」DPF) を設立しました。
DPF は、スラム問題への政府の関心を求め、立ち退き、火災、麻薬中毒などの問題に対処するため、教育と家族や地域社会の支援に重点を置いたプログラムの実施に率先して取り組みました。
1981 年、プラティープ先生は人類への顕著な貢献者に対して贈られる第 3 回ロックフェラー青年賞を受賞しました。賞金はスラム・チャイルドケアー財団の設立に充てられました。同年、DPFの幼稚園プログラムは都内15 のスラム・コミュニティに拡大されました。
また、プラティープ先生は、チュンポーン県とカンチャナブリー県に、それぞれ薬物や家族の問題を抱えた少年少女を対象とした更生施設「生き直しの学校」を設立しました。
プラティープ先生は、クロントイ麻薬対策ボランティア協会を立ち上げ、HIVエイズ感染者保護・管理プロジェクトと学校給食プロジェクトを促進し、それが他のコミュニティにも拡大しました。彼女の活動は徐々に、バンコクや他の地方のコミュニティのネットワークを強化し、問題解決についての政策を政府に働きかけるようになりました。
1994 年、プラティープ先生は、クロントイに信用組合を設立し、貧しい人々がお金を節約し、高利貸しを避けられるように支援しました。この活動は、1997 年の金融危機を経験し、スラム・コミュニティにとって重要な資産づくりとなりました。
2000年に行われた選挙で上院議員に選出されたプラティープ先生は、バーツ危機後の住宅ローン金利の引き下げに着手し、10年間にわたる化学薬品によるクロントイ・スラムの火災問題の和解に終結をもたらしました。
2004 年、スウェーデンのシルヴィア王妃は、タイで最も弱い立場にある子どもたちの権利を求めた35 年にわたる闘いを讃えて、プラティープ先生に「世界児童賞」と「グローバル・フレンズ賞」を授与しました。
2004 年のスマトラ沖地震によるインド洋津波がパンガー県を襲ったとき、プラティープ先生は チュンポーンの「生き直しの学校」の若者たちを動員して、大規模な破壊と人命の損失に見舞われたカオラック地区の人々を救援しました。DPF は 発災後3 日以内に被災した70 人の子どもたちのためのドロップインセンターを建設しました。しかし、そのほとんどは津波被害によって孤児になってしまいました。結果としてこのプロジェクトは、 2011 年に「バーン・ターン・ナムチャイ財団」を設立して引き継がれました。
残念ながらプラティープ先生が訴えた社会正義の提唱活動は、2010 年の政治的対立と2014 年の軍事クーデターによって打ち砕かれ、しばらくの間、彼女は政府との間で政治的対立の関係をつくることになってしまいました。
プラティープ先生が始めた近年のプロジェクトには、幼稚園でのモンテッソーリ教育法の導入と英語プログラム、子どもたちが野菜の育て方や調理方法を学ぶコミュニティ・ガーデンプロジェクト、スラムにクラシック音楽をもたらす音楽プロジェクトなどがあります。
DPF の活動は、制服や教科書を買う余裕がないタイの地方の子どもたちも支援しており、現在毎年1,300 人の子どもたちに奨学金を提供しています。
今日、経済的、政治的状況はこれまで以上に多くの課題を抱えています。以前は開発には望ましくないとされていたスラムが占拠する土地は、現在経済的に極めて価値のある場所となっており、港湾公社による最新の立ち退き計画が推進されています。この危機により、コミュニティを改善し、貧困層の居住問題に対する長期的な取り組みを推進していくというプラティープ先生の決意は、さらに強固なものになっています。
Awards
栄誉/受賞
NHKテレビ「アジアの青年」賞
1974年 NHKテレビ「アジアの青年」賞
ラモン・マグサイサイ賞(公共福祉部門)
1978年 ラモン・マグサイサイ賞(公共福祉部門)
タイ教育省優秀教師賞
1979年 タイ教育省優秀教師賞
ジョン・D・ロックフェラー青年賞(人類への顕著な貢献)
1980年 ジョン・D・ロックフェラー青年賞(人類への顕著な貢献)
タイ国立ラムカムヘン大学より名誉修士号授与
1989年 タイ国立ラムカムヘン大学より名誉修士号授与
Kullastree Magazine 誌「今年のベストレディ9人」の1人
2000年 Kullastree Magazine誌「今年のベストレディ9人」の1人
ビジネスウィーク誌オピニオンリーダー部門「スター・オブ・アジア賞」受賞
2000年 ビジネスウィーク誌オピニオンリーダー部門「スター・オブ・アジア賞」受賞
スウェーデン・ シルヴィア王妃より「世界の子ども賞」と「グローバル・フレンズ賞」を同時受賞
2004年 スウェーデン・ シルヴィア王妃より「世界の子ども賞」と「グローバル・フレンズ賞」を同時受賞
国際女性デーに、学者と仏教聖職者からなる国際委員会より「仏教における傑出した女性賞」を受賞
2007年 国際女性デーに、学者と仏教聖職者からなる国際委員会より「仏教における傑出した女性賞」を受賞
プラティープ先生は、タイ法務省から「ゴールデン・
2012年6月1日、プラティープ先生は、タイ法務省から「ゴールデン・スケールズ賞」を受賞しました。この賞は、青少年の更生センターを支援し、アドバイスを提供した福祉の分野で模範的な人物に与えられる賞です。 道に迷った子どもや若者たちが社会に復帰できるよう支援してきたことが認められました。
領土防衛司令部より「金賞ボランティア」受賞
2014年 領土防衛司令部より「金賞ボランティア」受賞
日本大使館より平成26年度外務大臣表彰
2014年 日本大使館より平成26年度外務大臣表彰
ソームサワリー王女殿下より「2014年度スリ・シアム・グッド・パーソン賞」受賞
2014年 ソームサワリー王女殿下より「2014年度スリ・シアム・グッド・パーソン賞」受賞
タイ科学技術評議会財団より、「子供・青少年」部門で「クオリティ・パーソン・オブ・ザ・イヤー2022」を受賞
2022年 タイ科学技術評議会財団より、「子供・青少年」部門で「クオリティ・パーソン・オブ・ザ・イヤー2022」を受賞
日本国より旭日中綬章を受章
2022年 日本国より旭日中綬章を受章 プラティープ先生に旭日中綬章 日本の天皇陛下は、プラティープ先生のタイ社会への長年の功績、特に恵まれない子どもたちへの卓越した計り知れない貢献、そしてタイ王国と日本の相互理解の促進を称え、旭日中綬章を授与されました。2022年7月6日、梨田和也駐タイ日本国大使が公邸で伝達式を主宰し、新たにバンコク都知事に選出されたチャドチャート・シッティプント氏を含む多くの関係者が見守りました。先生は、「この受章は彼女個人にとってはもちろん、ドゥアン・プラティープ財団のスタッフやボランティア、そしてクロントイ・コミュニティの人々にとっても非常に名誉あることであり、みなさんのご協力がなければ実現しなかった」と語りました。
プラティープ先生は、タイ科学技術評議会財団から「子供・青少年」部門で「クオリティ・パーソン・オブ・ザ・イヤー2022」を受賞しました。
2022年10月19日、プラティープ先生は、タイ科学技術評議会財団から「子供・青少年」部門で「クオリティ・パーソン・オブ・ザ・イヤー2022」を受賞しました。ミラクル・グランド・コンベンション・ホテルで行われた授賞式で、カセム・チャンケオ枢密院議員が賞を授与しました。この賞は、私生活と仕事の両面で成功を収め、さまざまな分野で社会と国家のために有益な活動に身を捧げている個人を称えるものです。彼らは良き模範であり、誇りを持ってこの栄誉を広めていかなければならないと祝辞を述べられました。
プラティープ先生は、クロントイ区役所から「The Outstanding Mother 2022」
プラティープ先生は、クロントイ区役所から「The Outstanding Mother 2022」賞を受賞しました。この賞は毎年、タイの母の日であるシリキット王太后の誕生日に合わせて授与されます。候補者は、家族と社会への献身、優れた行動、良識に基づき、社会から広く受け入れられている人から選ばれます。
バンコク都知事から「2023年度優秀母親賞」を受賞
2023年 バンコク都知事から「2023年度優秀母親賞」を受賞